「中小企業の良さ」ばかり強調する大人には気を付けろ。3年以内離職率と給料からみる大企業と中小企業の違い|図書館コラム|就活図書館

図書館コラム

「中小企業の良さ」ばかり強調する大人には気を付けろ。3年以内離職率と給料からみる大企業と中小企業の違い

株式会社カイラボ 井上洋市朗

_Writer:井上洋市朗

㈱カイラボ代表取締役「早期離職白書」著者

はじめまして。カイラボの井上と言います。
新卒入社後3年以内に辞める早期離職について調べているうちに「早期離職白書」なるものをつくってしまいました。
初めから早期離職する前提で就活する方は多くないと思うので、これまでの私の経験から就活にも役立つ情報をお伝えできればと思います。

大企業と中小企業。就職するならどっちがお得なのか

新聞やニュースなどで大学生の就職人気ランキングを見ると、上位には有名な大企業ばかりが並んでいます。企業との接点が限られる大学生が知っている企業が大企業ばかりになるのは当たり前なので、ランキングが大企業ばかりになるのも当たり前とも言えます。
では実際に大企業と中小企業ではどちらが得なのでしょうか。

得か損かを考える簡単な指標として賃金(=給料)について大企業と中小企業を比較してみます。労働政策研究・研修機構が発行している「データブック国際労働比較2017」のデータによると大企業(ここでは従業員1000人以上)の賃金を100とした場合、従業員500~999人の企業の賃金は86.7、100人~499人の企業の賃金は78.5となっている。つまり、従業員1000人の企業よりも従業員100人の企業は給料が2割以上安いということになります。

ちなみに、アメリカは日本よりも格差が大きく100人~499人の企業では69.5と大企業よりも3割近く給料が安くなっています。一方、イギリスやオランダのように大企業よりも中小企業の方が給料の高い国もあります。
いずれにせよ、日本では大企業の方が中小企業よりも給料が高いことは明らかです。

国別・企業規模による給料格差

やたらと中小企業への就職を勧める大人たちの正体

2割近い賃金格差があるにも関わらず、就活生のみなさんは「大企業だけではなくて中小企業にも目を向けた方がいい」とアドバイスをしてくれる人と会う機会があると思います。
当然、賃金がすべてではありません。仕事のやりがい、人間関係、勤務地、転勤の有無など企業選びの基準は人によって様々です。私自身も中小企業で働いたことがありますが、中小企業には中小企業なりの魅力があると思っています。

ベンチャー企業にいたときは自分の仕事がダイレクトに会社の業績に直結し、場合によってはボーナスなどにも直接影響します。また、やらなければいけないことが多いからこそ広い範囲の業務知識を得られました。別の中小企業で営業をしていたときは、結果さえ出せば何も文句を言われない文化のため、ある程度数字を残しつつ適度に力を抜きながら将来の起業に向けた準備をしながら仕事をしていました。

こういった中小企業の魅力を知ってか知らずか、一部の大人たちは就活生に対して中小企業への就職を勧めてきます。もしかしたら、こんなことを言う人もいるかもしれません。
「大企業に入っても3割が3年以内に退職するんだから中小企業に行きましょう。」

残念ながら「大企業に入っても3割が3年以内に退職する」は嘘です。こんな嘘をつく大人には気を付けてください。

企業規模でこんなに違う!新卒の3年以内離職率

大卒新卒者の3割が3年以内に辞めるという話しを聞いたことがある方は少なくないと思います。厚生労働省が毎年発表しているデータでも「3年3割」というのは事実で、バブル崩壊以降は30%前後で推移しています。
ただし、企業の規模別でみると、必ずしも「3年3割」とは限りません。
厚生労働省は産業別の3年以内離職率も発表しています。その結果をグラフにまとめたのが下図です。

従業員規模別3年以内離職率(2014年3月卒)

先ほどは企業規模別と言いましたが、正確には事業所規模別なので、必ずしも大企業と中小企業とは限りませんが、だいたいの傾向は見ることができます。このグラフを見てもわかる通り、従業員数が多い方が3年以内離職率は低くなる傾向がわかります。

中小企業を勧める人の中には「中小企業の方が社員同士の距離感が近くてアットホームだから離職率も低い」というようなことを言う人もいます。そういう会社もたくさんあると思いますが、少なくともこのデータから従業員が少なければ少ないほど3年以内離職率は高く、従業員数が多いほど3年以内離職率は低くなることがわかります。

情報が錯綜する就活の現場では情報収集が命

大企業がいいか、中小企業がいいかというのは、個人の価値観や相性などによっても変わってくるので一概に「どちらがいい」ということはできません。最終的な決断は就活中の皆さん自身がするものです。
注意していただきたいのは、中小企業を勧めてくる人の中には悪意なく「大企業に入っても3割が3年以内に辞めてしまう」と主張してしまう人もいます。
多くの方が就活中は様々な手段で情報を収集していると思いますが、SNSで個人が発信している情報は根拠があいまいだったり、勘違いだったりというケースもあります。そういった間違った情報を鵜呑みにしてしまうと、あとで後悔するかもしれません。多くの情報が錯綜する就活中だからこそ、情報源はどこなのか、個人の見解ではなく信頼できるデータなどに基づいているのかどうかに注意してください。

プロフィール

井上 洋市朗
株式会社カイラボ代表取締役
一般社団法人プラス・ハンディキャップ理事

「なんかカッコ良さそうだし、給料も良いから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも激務に耐えきれず、会議中に涙が止まらなくなり2年足らずで退職。フリーターや法人営業など職を転々としたあと、教育系ベンチャー企業に勤務。
2012年3月、株式会社カイラボを設立し早期離職防止コンサルティングを開始。自分と同じように新卒入社後3年以内に辞めた人100人へのインタビューを行い、その結果をまとめた「早期離職率白書2013」を発行。
現在は企業向けの早期離職防止コンサルティングのほか、高校生・大学生向けのキャリア教育の授業にも登壇している。

MENU

就活図書館